第六回 記憶されることを基準にすると見えてくる |
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兜 |
その、じいさんの話でわかるのは、語られることとして、
功成りあげたとか、成功したとかの話なんて
3分で終わりますよね |
熊田 |
そうなんですよ |
兜 |
その人は、こんなとき、こんな感じだったとか、
あれがこうだとかいう話の方が絶対語られるじゃないですか |
熊田 |
絶対そうなんですよ |
兜 |
あんとき、あいつ、ああやってよう、っていう |
熊田 |
そういう話ばっかしていると思うんですよ、実は |
兜 |
ということは、それしか記憶に残ってないって
ことじゃないですか 、人の生活って |
熊田 |
そうそうそう、そう |
兜 |
で、記憶以外のことを、なんか人間大切にしていていますよね、 |
熊田 |
ありますよね |
兜 |
誰が成功したとか、勲章もらったとか、はっきりいって |
熊田 |
どうでもいい、 |
兜 |
どうでもいいですねえ、なんにも輪郭がないですよ
実態がないですよね |
熊田 |
うん、そう、それはねえ、この間、よく若い客が乗ってきて、
マンションの話しているのといっしょなの
あそこのマンションはいいマンションなんだけど、
おれには、まだ手が届かない・・・とか |
兜 |
そいつが死んだら、あいつは、いいマンション
買ったんだよなんて話ししないね |
熊田 |
しないね |
兜 |
逆に、あんなボロい家に住んでてよぉって、いう話なら |
熊田 |
そうそうそうそう、 |
兜 |
猫が20何匹いてさみたいな、 |
熊田 |
今にも崩れそうなところに住んでいるとかさ
どうしてですかね、そういうふうな方がリアル
ですよね、なんか、 |
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兜 |
ああ、経験の方を語るほうが面白い! |
熊田 |
面白い、多分人間も情報として、お金を
いくら使ったとか、いくら残ったとか、
どっかいい家を別荘を買った、マンションを
買ったとか、そういう話よりも、人間が直に見て
その人が何をしているとか、普段、そんなに意識
していない記憶なんだけど、そういう情報量の方が
多いんですよ |
兜 |
うん、多いですよ |
熊田 |
ねえ、しゃべって、ふと、あれ、おれこんなこと
憶えようとして憶えてないのに、あの人なら、
こうしたんじゃねえか、とか思うんですよね |
兜 |
それは、あると思う。その見方で見るとすごくわかる |
熊田 |
うん |
兜 |
その、どうでもいいことと、大事なものっていうかね
どうでもいいことははっきり、わかってきますね |
熊田 |
そうそうそう、 |
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(つづく) |